どうもー、読者がただ一人健在という状況に大変興奮しつつ、タイピングしております。
さて、この小説についてなんですが、普通に出版されている小説って、一話一話が長いですよね。別にそれを意識してるから雹梨の小説も長くなってるってわけではないんですが、ルーズリーフ1枚で終わらせようとするとどうしても書きたい部分を書けなくなって来るんで、ついつい長くなっちゃうわけです。
だからこれからも長い文章になると思うんですが、「それが雹梨だ」みたいな感じで読んでくれるとありがたいですね(笑)
ではでは続きでどうぞw
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6月の半ばまでくると、学校内では体育祭の話がよく持ち出される。
それは、ロングホームルームなどで教師がそれ関連の話を持ち出して、実行委員たちが話を進めていく、という作業があるからだ。
一般教養化には、音楽科と違って野球部やバスケット部、陸上部・・・と、運動部に所属している生徒が多く、逆に音楽科には、科の名前通り吹奏楽部や音楽関連の部活に入ったりしているが、大半は文科系の部活に所属している。
一般教養科のクラスの多さと、音楽科のクラスの少なさでは明らかに勝敗が決まってしまうので、一般教養科と音楽科を分け隔てなく織り交ぜてチームは結成される。体力テストでの結果や、その他運動の成績などを基準に各チームに振り分けられる。
もちろん優姫は運動部ではない。まして今まで運動という運動に関わったことがほとんどない。体力もないし、身体能力も高いとは決していえず、むしろ低い。そんな中で徒競走に出場します、なんて挙手できるはずもなく、ただ一人、実行委員の司会に生徒全員が挙手を願われながらも黙っていた。
・・・とはいってもこの科は先程も説明したとおり運動部の生徒が多い。なんらかの競技に誰かが手を挙げたのを引き金に、次々と各種目に自ら進んで挙手する者が多くいたため、競争競技である100m走や、400m・800mリレーなどの種目はなんなく決まった。
「では、次のレクリーション種目についてです。レクリエーション種目は・・・」
すんなりと競争系の種目が決まったことに安堵の息を吐きながら、実行委員の生徒がそのレクリエーション種目というものについての説明がされた。
レクリエーション種目とは、色んなところでもみられる、競争ではなくむしろ遊びといった感覚の競技である。
パン喰い競争、尻尾取りゲーム、障害物・借り物競争、部活紹介を兼ねての各部活 部員同士でのリレー・・・の4つ。
先輩たちから聞く分には、こういう種目は見ている人を楽しませてくれる競技だというので、さほど辛い内容ではないらしい。しかしその分、運動部などが先の競争競技に出場しているせいで有志が募れず、あとは出場を嫌がる生徒たちが挙手せねばならない状況となるので、この種目の決定はどうしても時間がかかるのだそうだ。
優姫は毛頭、最初から何かの競技に出場する気はない。生徒全員が参加しなければならないという競技はないので、正直当日何も出場する種目がないとつまららないだけなのだが、それでも出るよりかはマシだという気分で、授業の終了を告げるチャイムを待ちながら眠気眼をこすっていた。
説明を聞いてから5分・・・
「誰か挙手してくれる人いませんか?」
プラス5分・・・
「あのー、いませんか?」
とどめにプラス10分・・・20分経過していることになる。
「お、お願いですから誰か挙手を・・・」
もう、こんな始末である。いや、本当に。
誰も挙手しようという意思がない。教室中に、運動部たちからの冷ややかな目と、しらけたような、うんざりとしたような空気が淀んでいた。
そして優姫も俯きながら、そっと重い溜め息を吐く。他力本願に思えるかも知れないが、どうか願う。誰か、お願いだから挙手してください、と。
さすがに20分以上経過すると、担任は痺れを切らしたのか、やや面倒臭そうな顔で口を開いた。
「いやー、やっぱね、やっぱこうなると思ってたんですよ、なんとなく。いや、例年こうなんですけどね。
自分から手を挙げてくれるのが一番なんだけど、どうしてもっていう時は最悪、これなんだよね」
と、紙切れを指で摘まみ、ひらひらとそれを生徒に見せつけた。すでに挙手した生徒には関係はないがしかし、挙手を未だしていない生徒にとってそれは脅威に値するものだった。
「クジ引きですね。正直、この手を使うのは苦しいことなんですが、まだ挙手をしていない人は、ここまで来て自分の名前を記入してください。あぁ、種目は何に決まるかわかりませんし、ハズレもあるので当たる確率はそこそこかも知れないですよ」
そう付け足すと、教卓にクジを置いて、生徒を手招く。
今度ばかりは多きな溜め息を吐いて、シャープペンシルを片手に優姫は立ち上がった。その前から何人かの生徒が立ち上がって我先にとペンを躍らせていた。
数学授業中に指名されて、黒板に答えを記入する時よりも、周囲の目線は優姫には向かないが、それでも前に出ると言うことと、もしかしたら当たるのではないか、という緊張もあって少し顔が引きつる。
でも・・・。
(先生は当たる確立もそこそこ多くないって言ってるし・・・)
・・・もしかしたら、免れるかも知れない。というか、挙手していない生徒の方が挙手している生徒よりも多いのだ。出場枠もレクリエーション種目であるから、そう多くない。
・・・ここは当たるはずがない、と強気で攻めるべきだ。
(そ、そうだよね、当たらない・・・よね)
きゅっと握り拳を作る。くよくよしている方が逆に何かに当たってしまうかも知れない。ならいっそのこと、開き直って強気で記入するべきなのだ。
(・・・よし)
唇同士を噛み合わせて、心の中で頷く。
ペンの尻をノックし、芯を出す。適当に、当てずっぽうで縦線の引かれた部分の上に桜衣と苗字を記入して、深呼吸とともにすたすたと自分の席についた。
しばらくして、記入漏れがないことを確認すると担任の教師は黒板に、誰1人名前が書かれていないレクリエーション種目の部分に白ショークの先端を当てた。発表の瞬間である。
各部活のリレーとあるが、それには茶道部は参加しないということもあって、そこは除外できる。残るのはパン喰い競争、尻尾取りゲーム、障害物・借り物競争、の3つ。
(当たりませんように・・・当たりませんように・・・)
今までも嫌事のクジを弾いたことがあるが、どれも自分は免れていたので、今回も大丈夫なはずだ。
パン喰い競争・・・出場者2名。かつかつと、普段ならチョークが擦れる音が心地良く聞こえるのに、今回は悪魔が笑っているような感じになる。
桜衣という文字は記入されなかった。それに安堵する。
続いて尻尾取りゲーム・・・出場者3名。自分の名前は・・・。
授業終了後、優姫は暗鬱な気持ちで絵璃華と今週の担当掃除区域に向かっていた。
「ちょっと優姫、何もこの世の末みたいな顔しなくても・・・。大丈夫だって、得点には影響しないって言うしさぁ、お遊び感覚でやれば良いって言ってたじゃん、先生も」
「うぅ・・・う・・・」
無かったのだ。最後の最後まで、桜衣の桜の木の字も書かれなかったのに・・・。
障害物・借り物競争の種目の、最後の3人目・・・!という瞬間に、「木」のへんが書かれて、そのまま桜という字が出来上がり、衣まで書かれ、挙句の果てにはフルネームで記入された。いや、フルネームなのはみんなそうなのだけれど・・・。
「あぁ・・・もう嫌・・・・・・」
こんなに暗い気分になったことが今までにあっただろうか?多分、きっとない。受験の時でもこんなに辛い思いはしなかったはずだ。
もう決まったことは決まったことだ、それは仕方がない。非常に不本意ではあるけれど、納得しているつもりだ。
「なぁーにがさっきから嫌なのよ?大丈夫だって、変な網の下潜って、バットを中心にぐるぐる回って、ふらふらしながら走ってまた何かあって、お札見て人か物を借りてゴールでしょ?尻尾取りゲームなんかよりも簡単じゃない」
・・・優姫にとってはむしろ尻尾取りゲームの方が似合っていた気がする。チームメイトと一緒に、おどおどしながらグラウンドに放り出されて、運動神経抜群な先輩に避ける間もなく尻尾を抜かれて、それで終了まで隅っこでしゃがんでいる。なんとも良く出来たストーリーなはずだ。
なのに・・・。
「そ、そうだけど・・・。そ、その・・・。た、体操服だし・・・。あれ、なんかピチピチだし・・・」
優姫の周りには、この謳榮に進路を置いた先輩はいないため、体操服の購入は、自分のサイズよりも1つか2つ大き目のものを購入した方が良いだなんて誰が教えてくれようか。
自分の服のサイズはMだから、丁度良いだろうとMサイズのそれを購入して、いざ着て見ると・・・。上の体操服は肌にぴったりとくっつき、胸はそれを押し上げる。下のハーフパンツは、自分の足を動きを邪魔しないのだけど丈が短くて、体育座りや走ったりすると太腿の上あたりまで見えてしまう。あれほど、購入の際にあらかじめ助言してくれなかった教師を恨んだことはない。
「あぁ・・・それは分かる。まさか男性教師全員女子のそういうのに興味があるからサイズも小さいんじゃないでしょうね・・・」
「そっ、そんなこと言わないでよ、意識・・・しちゃうじゃない」
親指を唇に軽く当てて恨めしそうにいう絵璃華に、もしかして、と意識してしまう。
体育の授業は今まで男子と一緒じゃなかったから良かったものの、今回は体育祭という場に身を置くのだ。男女関係なく目があるに決まっている。
・・・せめて上服が一つ上のサイズだったら・・・と今更悪態を吐くわけにもいかず、はぁ、と再び溜め息を吐く。
もう、どうにでもなれ・・・。若干そんな気持ちがあった気がしないでもない。
掃除の担当区域に着いて掃除を開始してからも、優姫はずっと溜め息を吐き続けていた。
そして掃除も終えて、鞄などを取りに教室へ戻る。そこで絵璃華と授業の話でもしていると、いつものように亜弥音が報道部関連のファイルを片手に、優姫たちの教室へとふらふら現れる。
「あら亜弥音、今日は早いじゃない。編集とかしなくていいの?」
頬杖を突いたまま絵璃華が問うと、亜弥音は大欠伸をした後でそれに答えた。
「や〜本当はあるんだけどね〜。記事とか書くために、体育祭のありとあらゆるものに参加しなさいって言われててねぇ・・・。それはもちろん応援団に行ってきて、報道部個人の感想として記事にしなさいってものなのよ・・・」
・・・つまりは亜弥音も、報道部という場所から貧乏クジを引いたわけだ。まったく、今年の桜衣家に「ラッキー」という言葉はないのだろうか。
「応援団かぁ〜毎年盛り上がるらしいねぇ、それって」
「・・・そうなの?」
「うん、まぁ単純に団旗を振り回す人がいて、何曲かアーティストの曲を流しながら参加生徒がダンスを披露するんだとか」
体育祭当日の、午前の部が終了して、昼休みに入るその時に応援団の披露があるということで、息抜きのようなものらしい。
「ちょっと、他人事みたいに言わないの!記事を書くためとはいえ、しんどい目に遭ってんのよ?」
何一つ興味を持ってなかった優姫と絵璃華に頬を膨らませながら、亜弥音がどさっと優姫の机に荷物を置いて、隣の生徒の席に着く。
「っていうかまぁ、あんたたちを参加させに来たっていうのもあるけどね、今日は」
自分1人だけがこんな目に遭うのが不服なのか、もう亜弥音の目には自分たちも応援団に参加させるというような色を宿している。
・・・・・・超苦笑いで絵璃華は逃げ出そうと構えている。鞄に手を掛けない辺り、冗談だとは窺えるが・・・。
正直、競技に出るというだけで重荷なのに、さらに応援団に参加してダンスするというのはさらに痛手だ。申し訳ないけれど亜弥音のように自分を売ることはできない。
もちろん、自分1人に注目が集まらないというのは分かり切っている。大勢もいる中で自分が目立つというのは有り得ないし。
だけど、メンバーには自分の姿が見られてしまう。控え目な性格だし、積極的に何かに取り組む姿勢でもない自分が、小さな動作で踊っているのを見られる。これhど恥ずかしいものはない。
「やーやー、そんな嫌そうな顔しないでよ、私たちクラスは違うけれど体育祭は同じチームじゃん?ね?だから優姫、一緒に行こうよー」
「え、えぇ〜・・・」
こう言われると断われなくなるのが優姫であって、断われなくするのが亜弥音なのだ。家庭でも、姉の琴音がいないと寂しがりな自分を慮って、自分が入浴している最中に入って来てくれたりもするし、報道部の仕事を終えたりした時は優姫の部屋に来て何か話を聞いてくれたり、してくれたり。時にはそのままベッドへ一緒に潜って朝まで寝てしまうなんてこともあるし・・・。
そういう好を鑑みると、やっぱり一緒に参加するのが道理だろうか・・・とか思ってしまう。嫌なものは嫌なのだけど。
昔の亜弥音は何かをしてあげたから、何かをしてよね、という見返りを期待することをよく言って来たが、最近はそうは言わなくなった。だからこそ、何かお返しをしなければならないと思ってしまう。
これは思いやりや優しさでなくて、甘さなのだろうか?
でもたぶんきっと、今日も亜弥音は帰宅した後、自分と関わってくれる。
「〜どうしようかなぁ・・・なんか恥ずかしそうだし・・・。
でも・・・うーん・・・・・・。
ねぇ、絵璃華も参加しようよ」
「へっ!?私!?なんで私もなのよ、っていうか優姫何気に参加する気?」
「わーい!優姫と絵璃華ありがとー!これで肩の荷物も軽くなったわ!あー良かったー!」
そして空気を読まずに業とらしく勝手に2人を参加させている亜弥音。これには優姫も怪訝な顔をしたが、もういっそのこと競技もこちらも出てしまえ、と思ってしまってもいた。
これから1週間と少しの間、帰宅が遅れることになるだろう。でももしかすると、遥と一緒に帰路につけるかも知れない。そう思うと、少しばかりはやる気が出てきた気がした。あとがき。
中途半端なところで終わってしまいました、お久しぶりです。
うちの学校では、もう体育祭?いつの話してんだよって感じですが、まぁほとんどうちの学校の体育祭をこちらに持ってきただけですので、適当に読み流してもらえるとありがたいです。
さて、優姫がちゃんが障害物・借り物競走に出場するということは、体育祭話の時に彼女を超リスペクトするということです。
可愛い場面とかあったら書きたいなーって思ってるんで、まぁまぁ期待しててください。2.3話後の話になりそうですな・・・w
ではでは短く終わりますw失礼wwww
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どうもこんにちは。今日は優姫ちゃんと遥くん視点で描いていこうと思いますので、どうぞそこら辺楽しみにしてやってくださいww
ちなみに凄く長いです。というかもうその長さになれてしまうとありがたいです(笑)
まえがきで書くこともあんまりないので、続きからどうぞーw
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茶道部の活動は毎日ではない。週に2日が常で、週末に地域の人々を招いてのお茶会がある・・・と決められた時だけ、週3日活動するのだが、それ以外はいつだって平穏だ。
6月になると、さすがに電車通学でも暑い。電車内のクーラーは効きが悪く、運動部の生徒がいるとそれだけで暑く感じるし、朝なのに汗の臭いが抜けないということもあるが、そんなこと、口が裂けても言えない。と言うよりも、彼ら彼女らは自分の目標のためにそういうのを我慢しながら日々を生活しているのだ。運動すら出来ない人間にそんなことを言える資格があるはずもないし、自分の性格上、言ってはならないと思っている。
少し前に遥と電話をしている最中に、忙しくないのであれば軽音部に顔を出してみてはどうか、と誘われたことがあり、その時は、部員の迷惑になるから行けないと断ってしまったのだが、現にもう「軽音部」と表札の取り付けられたその部屋にまで足を運んでいた。
遥に返した言葉と、自分の行動との矛盾。廊下にはギターなどの音が聴こえて来るけれど、何よりも聴こえるのはバンドで唯一の打楽器であるドラムの強打音。それでも室内の外では幾分か小さく感じる。
しばらく悩んで、やっぱり戻ろうと踵を返して1歩踏み込むと、軽音部の部室のスライドドアが歯切れの悪い音を立てながら開かれて、もう2歩目、3歩目と踏み込んだところで声をかけられた。綺麗に透き通った声だった。
「おっ。ねぇ!もしかしてつい今までここら辺に立ってた!?」
3年生を示す色のシューズを履いて、片手にマイクを握っている女子の先輩。「大きな瞳でかなりはさみですいたショートカットが特徴的なのが、うちの部長」と遥から聞いたことがあり、見た感じまさしくそのイメージとリンクしたので、この人が部長だろう。
「あっ・・・すみません、すぐに戻ります」
「えっ?うぅん、邪魔とかそんなんじゃなくてね。よかったら見てかない?って思ってさ。
それに、あなた遥くんの彼女じゃなかったっけ?もし見かけたらその時はよろしくしてやってって言われてるからさっ」
迷惑をかけたと思って逃げ出したのに、先輩はむしろ見ていけと勧めている。マイクを握っているということはヴォーカルか・・・なるほどそれに相応しい声の良さと、垢抜けた気持ちの良い明るさなどの雰囲気を放っていた。
「ピアノとか弾けるって遥くんから聞いてあるんだけど、うちの部にもピアノとちょっとは違うけどほとんど一緒のキーボードってのがあるしさ、ねっ、触ってみようよ!」
自分が何が答える前から既に肩を抱かれ、押し流される感じで部室に入れられる。それなりの防音対策が成されているのか、当然なことだけれど廊下にいた時よりも室内の方が賑やかになっていた。音の大きさに驚いて、思わず耳を塞ぎそうになる。
「うっっるさいでしょー!?一気に素の音が聴こえるからねぇー!私声の大きさには自信あるんだけどっ、このうるさい中でも聞こえるー!?」
「はっ、はいっ!」
うるさい中では相手の耳に言葉を伝えるには自然と喚くように叫ばなければ届かない。先輩の声は充分に聞こえるのだけど、優姫は声を張り上げて叫んだことなんて全くないことだったので、返事の声が裏返ってしまったがしっかりと頷くことは出来た。
声が裏返ったことを笑ったのか、それとも先輩自信の声が優姫に届いたことに安堵したのかは分からないが、にっと清々しく先輩はこちらに笑みを投げかけた。
見知らぬ女生徒・・・優姫が入室してきたのを部員は気付いた様子もなく、自分の楽器を演奏しながら譜などに目をやって、誰も優姫に関心せず、邪魔だとも思っていない。
「ごめんねー!みんな演奏すると周りが見えなくなるからさぁ!キーボード弾けるよねぇ!?ちょっと待っててくれるぅー!?」
先程と同じように声を出して返事をするけれど、声量が足らず、周囲の音に掻き消されて不協和音に溶け込む。先輩には優姫が口パクで返事をしたように見えたかも知れないけれど、返事をしたと解釈してくれたことだろう。
先輩がキーボード担当の2年生の女子のもとへ歩んで、話しかけた。こちらを少し見て、何かを告げると、その先輩は笑顔で自ら手招きしてくれた。快諾してくれたのが少し嬉しくて、やや小走りでそこへ向かう。
「おぉ〜!この子が遥くんの彼女なんだー!優しいしカッコイイもんねぇ!すご、マジ可愛いじゃないですか部長!」
「でしょ〜!?それにこんなキュートでプリティな子がうちに見学に来てくれたんだよ!?ねっ!なんか簡単な曲弾かせてあげてよ!」
明るい先輩が2人並ぶと、1人の明るさ以上の明るみが表れる。なんというか、元気。元気×2みたいな感じで、この2人を見るだけでも軽音部の全体像を見た気がする。年上に対して丁寧語を使うけれど、関わり合いは友人同士のように砕けている。
「んよしっ!じゃあアーティストとかの曲じゃないんだけど、この曲っ!キーボード中心に作ってくれてる奴だし、簡単だからいいんじゃないかな!?ピアノ経験のない私でもすらすら弾けたから、経験者はもっともっと良く弾けるはずっ!」
相変わらず他の楽器の演奏が止まず、先輩たちは大声を出さざるを得ない。
さぁ、とキーボードの鍵盤の前に立たされ、譜面と向き合う。見た感じ、大体のリズムが読み取れる。ここで、優姫は自分の頭でメトロノームを作り出す。周りで音楽を学ぶ者には身につけられなかった術だ。
操作方法は、なんとなく分かる。数年前に遥たちと一緒に少し遠いライブハウスまで足を運んで、そこで演奏した記憶をちゃんと取り戻しているからだ。
そっと、鍵盤に指を置くと、あまりにも軽く、不意に音を出してしまった。自分が弾いてきたピアノのそれとは比べようもない程軽かったが、それも爆音の前には掻き消された。
うるさい中では集中が乱れるとはよく聞く言葉だが、優姫は静かでもうるさくても自分と言うものを示すことが出来る。要は慣れの問題だ。
すーっという深呼吸と共に、指を動かして、それと比例するように視線が楽譜の上を流れる。ベースやドラムの音が、静かになる。それは優姫の音によって静かになったのではなく、小休止というように音を出すのを止めると偶然、優姫が目に入ってそのまま聴き入ってしまったということだ。休憩として手を休めていなければ誰も彼もこの優姫の演奏は耳に入らなかったに違いない。
数十秒、優姫の奏でるキーボード以外、ギターもベースもドラムも、弾き手に愛想を尽かされたかのように沈黙していた。ただ先輩だけは鼻歌交じりにそれを口ずさんでいた。周囲の視線を恥ずかしく思いながらも、優姫は続ける。視線が集まる感じは確かに辛いけれど・・・。
誰もが、部内では見たことのない顔が綴っていく音に、目と耳を奪われていたが、遥だけは違った。
キーボードが全面に押し出される曲であるので、これをバンドとして練習したことのある遥にとってはすぐ何を演奏しているのかが理解出来た。
つい先日、優姫にうちへ見においでと誘ったことがある。それできっと来てくれて、部長の「断わらせない」雰囲気で連れてこられたのだろうと思う。その部長の態度の延長が、この演奏ということになる。
悠矢、陽、迅の3人に視線で視線で話しかけると、すぐに伝えたいことが伝わった。セッションだ。
もちろん優姫と最初に音を合わせるのは遥だ。もうすぐサビが終わって、2番目の歌詞に入る前の間奏がある、そこで遥がギターを参加させて、優姫と2人の世界をしばし味わう。そして歌詞に入ったところで、先程目を合わせた3人の演奏が一気に混じる。そんな作戦だ。
遥が知る限り、優姫は音楽の経験が遥よりも豊富だ。幼い頃から・・・遥の自宅の隣に引っ越してくる以前からピアノは習っていたそうだし、発表会にも何度も参加していたらしい。
こっちに引っ越してきてからは、自宅から最寄のピアノ教室へ通い、それと+αということでブラスバンドにも足を運んでいた。ブラスバンドではクラリネットやらフルートやらを好きな時にそれぞれ吹かせてもらったらしく、コンテストにも何度か出場していた。もちろん別の楽器の演奏者がコンテストに出るという時はいつも伴奏としてピアノ演奏を担ってきた。緊張感ある会場には少しは慣れているものだろう。
だから、多分・・・恐らく、優姫が集中して演奏を行っている最中に遥たちがそれぞれの楽器の音を介入させても、優姫は難なく自分たちとセッションしてくれるだろうと思う。
サビが終わりを告げようとする。ギターのネックに当てた手を下方から上方へとスライドさせて、準備を整える。
優姫がキーボードの音設定を切り替える。メロディーが変わろうとする。その時、一緒に何かのボタンを押すようにして、遥がギターの弦を弾いて音を奏でる。
音を合わせるための参加音として解釈したか、それとも突然の演奏に介入してきたそれを不協和音と思ったか、どちらかは分からないが優姫は驚いたように、音の発生源であるギターのコードを繋いだアンプを見る。
そのコードの先にいるのは、もちろん遥だ。目が合ったので遥は笑顔を向けてやる。すると優姫も顔を引きつらせながらなんとか笑顔を作り、ギターとの旋律を重ね合わせる。第一関門は突破だ。
そして次は第二にして最後。遥とは別のギターである陽、下地作りの音を奏でる迅のベース、同様に下地であると共に曲そのものに迫力を宿す悠矢のドラム。それらが一気に参加してきた。
遠慮を知らない彼らの音は、優姫を飲み込もうとしたが優姫とて終わるわけにはいかない。知らない曲だけれど、譜の構成は明らかに簡単なものだったから、そんなに苦もなく演奏できる。簡単な曲だからこそ、しっかりと協調性を持って仲間の音と合わせたい。自然に優姫はそう思っていた。
ピアノの演奏会、発表会とは違う。ブラスバンドの全員で全ての楽器で行うコンサートや、コンテスト、その伴奏の時とも違う。
楽しい。楽しい。ただひたすらに楽しい。面白くてならない。口元が引っ張られて、半ばにやけるような笑みが出来そうになるのを必死に堪える。
こんなこと、今まで経験したことがなかった。昔は、ただ与えられた役目を果たすだけだったのに、今はそれすらも足らず、仲間と音を作り、紡いでいくのが凄く楽しい。
もしかして、遥は・・・その仲間はずっとこんな思いを仲間と共に共有していたのだろうか?
ずるい。いや、ずるいというか単純に自分がそこにいなかっただけの話で、別段何か特別なものでもなかったから参加していなかっただけなのだけれど・・・。
(いいなぁ)
まだ一緒に演奏して数十秒しか経っていないのに、彼らの楽しさが羨ましく感じる。彼らは意識しないうちにこういう楽しみにを内に宿し、ライブという発表の場で一気に楽しみを爆発させるのだ。そんな自分たちを解放できる中で緊張している方が馬鹿馬鹿しいのかも知れない。
トクン、と胸が揺れる。もう冷静な態度で弾くのではなく、ほぼ「楽しい」という感情論に任せて弾いているに等しい状況だ。
譜を目で追っていくが、もう指でめくるページがないことに気付く。終わりを迎えようとしているのだ。爆音の中でも遥の奏でる音を必死で耳で探りながら、演奏を続ける。
最後の盛り上がりを鮮烈に楽しみながら、余韻を引くことなく一気に曲締めが訪れて、一瞬の後にその曲は終わった。
「・・・ふぅ・・・・・」
「すっ・・・・・・」
「・・・すっ・・・・・・・」
深呼吸を吐くと、キーボードを触らせてくれた先輩と、部長とが肩を震わせて手を取り合っている。
その瞬間、その肩を震わせた溜めが解放された。
『すっっっっごぉぉぉぉぉーい!』
そして2人に抱き締められた。頬に当たる柔らかく弾力のある感触。胸だ。2人は自分よりも背が高いから、抱き寄せられた時に頬にそれが当たったのだ。
抱き締めながら、きゃっきゃきゃっきゃと誉めてくれる。
「すごいすごい!いきなりでしかも遥くんとか混ざってきたのにミス一つもなかったし!それに何!?凄く可愛いんだけどー!きゃー!」
なんて、またむぎゅっと抱き締められる。苦しいけれど、こういうのは嫌でもなかった。琴音とはまた一味違う姉に構ってもらっていような気がして、優姫も自然と体を任せていた。
「ねぇねぇ!あなた名前はっ?ってほっぺ柔らかっ!」
「ふっ、ぅ、ふぇ、さっ、桜衣 優、姫・・・れふっ」
両方の頬を掴まれ、いつしかの罰ゲーム・・・縦 縦、横 横、丸描いて・・・みたいに、優姫の頬を弄りながら訊ねてくるものだから、自分も頬を弄られた状態のまま答えてしまったので、言葉の終始がおかしくなってしまったのに、それさえも「可愛いー!」なんて言われて、赤面する。別に、可愛くしようとか思ったわけではないのだが・・・。
「優姫ちゃんねっ?やったやった!」
何が嬉しいのか分からないが、部長は凄く喜んでいる。
「ねねっ!何か部活入ってる?別にそこ辞めてこっちに来なよとか言えないけれど、部の方針で見学とかしに来てくれた人は大事にしよう!ってなってるのね?で、だから良かったらいつでもいいからまた来てくれないかなぁ?」
今度は両の手を、さらに両の手で握られ、可愛さが満遍なく出されている瞳に呑まれる。なのに誰も彼女を疎ましく思ったりはしないだろう。そこが彼女の売りなのかも知れない。
「あ、はい。・・・またお邪魔してもいいですか?」
「もちろんよぅ!今日みたいに、来てくれた時毎回楽器を触らせてあげることできないかもだけど、私の時間とかがあったらちゃんと相手もしてあげられると思うからさっまた来てよー!」
わしゃわしゃと髪を撫で、無理している様子もなく先輩は優姫を可愛がっている。それに気付かない優姫だが、どこか嬉しい。
「あっ!おーい!遥くーん!こっち来てぇ!」
優姫が来る前からずっとギターを引き続けていたのであろう遥は、額から伝う汗をタオルで拭いながら、ギターを傍らに掛けて、部長に呼ばれるままこちらへと歩いて来た。
「すっごい彼女じゃない!このこのぉ!ピアノは出来るしキーボードは音調整もばっちりだし、可愛いしおっぱい大きいしで最高じゃない!」
「や、最後のは関係ないですって。・・・でも驚きました。まさかこんなに出来るだなんて。
緊張しなかった、優姫?」
「っあ、うぅん、大丈夫だったよ。ごめんね?練習中にお邪魔しちゃって・・・」
肘で突付かれながら部長に答えて、優姫に訊いてくる遥に手の平同士を重ねて謝罪する。
「あぁ、そんなのは全然大丈夫だよ。うちは部に興味を持ってくれる人全員を大切に・・・がモットーだからね。ですよね?部長」
「そのとーーーり!」
ぴしゃりと合意する部長。変なテンションに遥も頬をかきながら、優姫からみて、彼は心持ちどこか嬉しそうだ。
(私のこと、ほんとに迷惑じゃなかったのかな?)
そう思う。毎回ここを訪れるんじゃなくて、本当に、たまーに外で見学するくらいの感じでここを訪れる方が良さそうだ。
「ねぇ遥くん、帰り部のみんなでどっか寄って帰ろうよ」
「・・・部長、部活が終わったら各自すぐに帰宅するようにって常々言ってませんでした?」
「あれ?そうだったっけ?あーでも私そんなこと言いながら友達とバーガーショップ寄ってたなぁ」
「ほら、やっぱり結局みんなそんなの守ってないんですよ」
「むー・・・。まいいや。今日はみんなでどっか寄ってこう。優姫ちゃんがあまりにも良い子で可愛い子過ぎたからね。
どうかな?優姫ちゃんが大丈夫ならお話しがてら一緒に帰りたいなーって思うんだけれど」
遥のどうこう言うのを無視しながら、部長はウィンクを投げかけながら誘ってくる。
部員の数は少ない。十何人もいたらそれこそ軽音楽の練習が出来なくなるし、残念ながら音楽科でも吹奏楽部を選ぶ人が多いから、この部活の人員は少なくて、それだからちょうど良いのだと言う。
部長の人柄にどこか惹かれて、優姫は大きく頷いた。
「おしっ!決まりっ!優姫ちゃんも来るんだから遥くんも来るよね?よね!?」
「い、行きますよ、行きますってば」
どうやら部長は、女性ながらにして、紳士的な態度を女子に見せるのだが、それ以外・・・男子には半ば強引に連れ出そうという亜弥音と似たような面が見られる。
(そういえば亜弥音って報道部に入ったんだっけ)
今朝から、「今日は色んな部活に取材だってさ。その後は編集。忙しくなるわねぇー」なんて、トーストを齧りながらそんなことを言っていた。
好奇心が性格のと言っても過言ではない亜弥音だ。きっと報道部が購買で販売する雑誌には亜弥音の協力もあってずいぶんと詳しいような誌面になるだろう。
きっと、この部活にも明日かそれくらいに亜弥音が呑気に間延びする声で「こんにちはー」と挨拶しながらやって来るに違いない。そして彼女ならではの工夫で、良い紹介が誌面で成されるだろう。
(遥はもちろん、亜弥音にも頑張ってもらわないとね)
今日の出会いは、今後の優姫の学校生活、未来にと大きな影響を及ぼすかも知れない。
真に今日は楽しかった。遥たちがバンド活動する根源に辿り着いた気がしたのだ。
3年という時間は、あまりにも長くてあまりにも短い。それは秒単位で数えるか。日単位で数えるかによって左右されるけれど、限りなく中途半端な時間を今は大切にしよう、そう思えた瞬間だった。あとがき。
長ーい。長ーい。物凄く長ーい。
そもそも疾風PCでのブログ更新を辞めたからパソコン使用率激減じゃん・・・。
読者はついにいなくなるのでしょうか・・・。
大きく躍進せねばなりませんね。いっそのことタグでHP作って、宣伝しまくってオリジナル小説書きさんと友達になろうかしら。
実行できない俺がいるorz
さて、今回のお話は、セッションとかそんな感じ。
雹梨もバンド練習で友人を家に招き、8ビートでもなんでも、音合わせしてる時に結構にやけちゃうもんですから、そういう自分のリアルな部分表現してみました。
別館で「Vコス優姫つぁん」なるものを描きましたが、それに辿り着くまでの話を考えなきゃいけないことになりそうです(笑)
とてつもなく長かったので・・・というかあとがき書くのがすごくしんどいのでここら辺で終わりますw
次回から体育祭編に向けて書いて行こうと思いますww
ではではノシノシ
Return <<
更新が超遅いです。でも頑張って執筆したんですよ、えぇ。
今回は優姫ちゃんの誕生日のお話ということもあって長くなりそうです。
正直読み手もしんどいとは思いますが、まぁまぁご覧くらはいww
ではでは続きでどうぞwww
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来る5月24日。高校で初めての中間考査の1週間前であるため、部活動は停止となっている。
その活動停止期間と彼女の誕生日とが重なるとは思えず、遥は昨晩から気分を向上させていた。
朝に誕生日を祝うメールを送り、学校ではそれっきりだったのだが、放課後は一緒に過ごそうと考えていた。
肝心のプレゼントもしっかりと持って来ているから、きちんと渡せるはずだ。
放課後、自分が優姫に話しかけられるまでに何人からなんらかのものを彼女が受け取るのだろうかと煩悶しながらも、音楽科は午後3時半頃に放課となる。
一般教養科の放課はこの1時間程度後になるため遥は、グラウンドで自主練習に励むラグビー部や野球部などの生徒を眺めながら、生徒玄関付近で彼女を待った。急に、予約もなく放課後を一緒に過ごそうと誘うのだから、もしかすると何か用事がある・・・とか、先にこのことをメールしていなかったから友人たちとどこかへ遊びに行くことになっているかも知れない。
校庭の時計台の針が4時を指す。授業終了を告げるチャイムが鳴るのはまだ30分も後だ。まだ時間に余裕があるので、再び校舎に戻り小腹が空いたので何か食べられるものものでも――購買へ向かうことにした。
購買が設置されている場所は、生徒がいつでもすぐに足を運ぶことができるようにと配慮されて、1棟と2棟の渡り廊下にある。生徒の教室は1棟にあるので、向かえばいつでも何人かの生徒が購買にいる。今回は放課されている音楽科の女生徒が2人、商品を手にとって雑談していた。
入り口のドアを開けると、目にいくつもの商品が遥を迎える。どれにしようか悩む瞬間でもある。
とりあえず手軽に食べられるものを・・・と選んだのが、サンドウィッチ。それを2つと、優姫が好んで買うという2,3口で食べられる小さなクレープを数個、そして紙パックのミルクティーを2つ購入して、ビニール袋に入れてもらう。クレープはもちろんのこと、サンドウィッチとミルクティーを2つ買ったのは各1つを7時間目の授業を終えた優姫に渡すためだ。
また生徒玄関の入り口に戻り、数段の段差に腰を降ろして、時間潰しとでも言うように先ほど購入したサンドウィッチの包み紙を破って、ミルクティーにもストローを挿す。後15分弱。食べ終わってしばらくすればチャイムが鳴るだろう。30分が授業終了だが、その後のホームルームも含めると45分くらいになりそうだ。
サンドウィッチとミルクティーをしっかりと胃に収め、暫く後。
一気に校舎が騒がしくなり、多くの一般教養科の生徒が靴を履きながら大勢出てくる。その中にはカップルが何組かいた。
1年生の下駄箱を見つめていると、友人と話しながら歩いてくる優姫を見つけて、ちょうど目が合った。と思ったが、すぐに立ち止まって友人を振り返り、数秒会話するとちやほやされながらも靴を履いて、照れながら出てきた。なるほど、放課後こうして会えることを彼女も心の隅で期待してくれていたのだろう。それが叶ったから亜弥音やその他の友人に相談して、囃されてきたわけだ。
放課後一緒に過ごしたいと思ったのはやはり2人ともに共通した事項だったのだ。
「遥っ・・・!」
嬉しそうに玄関を出て、2,3段の階段を降りて遥の目の前にふわりと立つ。誕生日に放課後会えるなんて、想像していたけれど意外だったというように、彼女にも普段よりか元気がある。
「あぁ優姫、7限目お疲れ様。お腹空いてない?サンドウィッチとミルクティーに、あと優姫が好きなやつも買ってあるんだけど、良かったら食べて」
そう言いながら、片手に下げている購買で買ったビニール袋ごと彼女に渡してやった。
「あ、でも悪いよこんなに買ってもらって・・・。いくらしたの?お金払うよ」
「あぁ、いい いい、せっかく買ったんだからお金のことなんて気にしないでさ。
どっか寄りながら帰ろうか?」
財布を取り出そうとする優姫を制止し、左手を差し出す。もう周りの目なんて関係ない。恐縮するのはごめんだ。
「あ・・・あ、うん。ありがとう」
さすがに優姫もまだ抵抗があるのか、周囲に目を配りながら恥ずかしがって手を差し伸べてくる。
しっかりと互いに手を握って、校門を出て行こうと歩く。歩くのだけど、同級生の男子と女子が皆目を丸くしてこちらを見ている。
男子生徒なんて、朝の校舎で耳に入った会話をそのままに、購買で何かしらのものを購入して彼女へのささやかなプレゼントだと思っていたのか、ドリンクなどは冷えた状態で、お菓子も持っているのだろう。
それを一人で歩いてきた優姫に渡そうと考えていたのか、手を繋ぎ合う2人の姿を確認した瞬間、ドサっと袋ごとそれらを落として、口をあんぐりと開いたままこちらを凝視している。
「ね・・・あの・・・遥・・・?」
「これで分かったでしょ?今目をひん剥いて見てる人全員優姫のこと好きだったんだよ?全然分からなかった?」
周りの生徒の反応が気になったのか、心配そうに問うてくる優姫に答えを言う。それを言うなら遥だって、と言い返してくる優姫。
「ち、違うとは思ってたけど・・・。でも他の女の子だってすごい目で見てるよ・・・?」
女子は女子で、口元に手を当てて目をかなり開いている。
先輩たちは別段気にした様子でもないのに、1年生だけがこの有様だ。
そんなに遥と優姫は理想の男女像として周りから見られていたのだろうか。
自分に人気がある、というよりも、優姫が羨望の目を向けられているということがこちらとしては嬉しい。そんな憧れの美少女が自分の恋人なのだから。
「いやーそれは大丈夫。もういいじゃん。一緒にお店の手伝いしてるんだし、征宗くんたちにもバレてるし。
・・・それにしても男子の驚き方がすごいね・・・。購買で買ったのを優姫にあげようとしてたのかな」
それ以上は意に介さず、遥は優姫と一緒に校門を抜ける。喉が渇いていたのか早速ミルクティーにストローを挿してちまちまとゆっくり飲んでいる。親に手を引かれながらも、買ってもらったドリンクを飲んでいる子供のようだ。
「どうしようか?どっか寄りたい所でもある?今日は何でも付き合うよ」
「あ、うん、ありがとう。
うーん・・・プリクラとか、撮れないかな?」
恋人同士の記念日、友人関係で・・・と、色々な用途があるプリクラ機。今回はもちろん前者の方で、優姫もこういうことは記念に残しておきたい性格なのだ。
「あぁ、いいね。近くにゲームセンターみたいなのあるからそこに行ってみようか?」
「うん。でも遥とプリクラ撮るの初めてじゃない?ちょっと緊張しちゃうな・・・」
とか言いながら、いかにも早く撮りたいですといった表情をしている。好きなこと、興味のあることに関しては、最近の優姫はよく顔に出る。本人にそのようなつもりはなくても、一緒にいるこちらとしては丸分かりだ。
行き交う人たちの中で、遥もよく話す生徒がいると、すぐに食いついてきた。
「ちょっ!お前付き合ってたの!?」
いかにも驚きの顔である。いや、別にこの生徒は優姫のことを恋愛対象として見ていないということであったが、さすがに手を繋ぎ合う2人は意外だったようだ。
「え?うん。今日はこの子の誕生日だからさ、一緒に記念撮影にでも行こうってね」
「ほぉ〜・・・まさかお前が付き合ってるとはなぁ〜・・・俺も頑張らないと。んじゃ、ラブラブしてくれよ、またな」
とかそんなことを言って、彼は学校へと駆けて行く。本当に、優姫に対しては何も感情を抱いていない様子だった。
「私たちってそんなに意外なのかな?」
「ど、どうなんだろうね?うーん、まぁ優姫は消極的って印象があるだろうから付き合ってるっていうことに驚いたのかもね。性格的にも容姿的にも抜群だし」
交差点の赤信号で歩みを止める。周りに車なんて一台も停車していないし、走っていないのだからそのまま歩いて行っても構わないのだけど、一応止まる。
小さいがしかし、整備されているゲームセンターの入り口がもうすぐそこに見えている。
優姫はゲームセンターなどのがやがやした雰囲気が苦手だというから、別段コインを入れてゲームを楽しみたいとは思わないはずだ。プリクラの撮影ができればそれで充分、といった様子だ。
信号機の色が青色に変わり、横断を歩道を渡って数十歩、ゲームセンターに辿り着いた。
入り口付近に、目的のそれが設置されている。カーテンが開かれているから、誰も使用していないのだろう。あれ、と指で示して、2人でその中に入る。
「うわぁープリクラなんて本当撮ることないから全然分かんないや・・・。
優姫は操作法とか分かる?・・・あっ、普通に説明画面の周りに書いてるから大丈夫か」
「そだね。んー・・・でも・・・・・・あ、これかな」
柔らかそうな液晶画面を指先で軽くタッチすると、いとも簡単にそれは作動した。
画面に次の操作を促す文章が流れ始めると、優姫が財布を取り出した。使用料だ。
しかしここで払わせるわけにはいかない。今日は優姫に何も苦を感じさせずに過ごさせるためにも、遥は優姫を憚った。
「お金は僕が。操作は優姫に任せるから」
「えっ、でも・・・購買のだってあるし・・・」
「大丈夫だって、今日は特別なんだから」
300円程度、財布から取り出し、コインの投入口にそれを投入すると、さらに次の段階へと画面が切り替わった。
「ご、ごめんね・・・?」
眉を寄せて、悪びれた様子の彼女に、遥はぶんぶんと首を振って、続けてと促す。
よし、と準備が完了したのか、ぎゅっと握り拳を作った優姫は、遥を振り返り、隣に並ぶ。
プリクラ機に内蔵されている、アナウンスの子供染みた声が、シャッターを切るまでのカウントダンを流す。
「えぇっ!?ポーズはっ!?」
あまりにも咄嗟過ぎたので、思わずうろたえてしまったが、優姫は落ち着いた風で遥の腕に引っ付き、Vサインを出してカメラを笑顔で見つめていた。
「まずは、普通に」
「あ、あぁ、うん、おっけー」
ぎこちなく笑みを浮かべながら遥も彼女と同じポーズを取り、そのぎこちなさを解消しながらシャッターが切れるのを待つ。
シャッターが切られる。ほんの少しの眩しさに、目を瞑ってしまったのではないかと思ってしまうが、撮影した写真を確認して、ちゃんと目が開いていることに安堵した。
「ふふ、遥ちょっとぎこちない顔してる」
「えぇ?そうかなぁ?自然にって意識したんだけどね・・・」
確かに目はちゃんと開いているのだけど、頬周りが強張っている気がしないでもない。無理に作った笑みバレバレだ。
一方の優姫は、お馴染みの、唇を閉じた優しそうな笑みで写っている。今時、歯を見せて笑わないというのも珍しいことだ。
「つ、次はちゃんと撮れるように頑張るよ。どんな格好したら良い?」
「うーん、どうしよっか・・・」
曖昧に言葉を濁しながらも、優姫は容赦なく撮影準備のボタンをタッチした。
あと何秒で撮影します、というアナウンスが流れる。
「ちょっ、え・・・?」
優姫に助けを求める。なのに優姫はちょっと押し黙って、恥ずかしそうにしている。顔が朱い。
3、2、1・・・
えぇい、と無理矢理に何かしらのポーズを取ろうとすると、優姫が遥の腕を掴みながら背伸びして顔を近づけてくる。
「なっ、えぇっ?」
少し潤った、柔らかく熱い感触が頬にそっと触れる。驚いた顔をしながら、シャッターが切られた。
「ゆ、優姫っ?」
凄い。お互い顔が真っ赤である。しかし、今になって、優姫が何故言葉を濁して撮影開始のボタンを押したのかが理解できた。
「っ、お、驚いた?」
「そ、そりゃ驚くよっ、い、いきなり・・・」
「ご、ごめんねっ?そ、その・・・」
恥ずかしくて言い辛かったから・・・。そう言われると何も言い返せなくなる。いや、というよりむしろこれはこれで嬉しかったのだが。
「ん、よ、よし、じゃあ大丈夫。え、えっと今度は・・・」
そんなことを言いながら、今の撮影結果を確認する。
目を瞑って頬に口付けする優姫と、それに対して驚きの表情を浮かべた遥。なんだかあまりにも自然体過ぎて、何の違和感もない。
気持ちを落ち着かせて、意識と身体ををこの場に慣れさせる。
「え、えと・・・い、いい?」
まだ頬をぽーっと朱に染めた優姫が、今度は遠慮しがちに訊ねてくるのに対し、しっかりと頷いた。
「でも もう取れるポーズが・・・」
思い浮かばぬようで、もう遥が何か考えるしかなかった。ぐだぐだ終わるのは何か勿体無い気がした。
「じゃあ、優姫さっきみたいに目を瞑って?」
「ん、うん・・・」
どうかな?こうかな?と思案しながら、良い写りになるように角度を考えながら、優姫の肩を支えながら探す。
時間がない。もうほんの数秒でシャッターが降りる。
馬鹿だ。本当に馬鹿なことを考えている。お互いに口付けを交わす写真を撮ろうとしている自分が馬鹿らしくて仕方がない。しかもそれに応えている優姫も優姫で、結局は「あーもう、馬鹿だなぁ」という感じである。
顎をそっと摘まんで、くいっと上を向かせる。優姫も察している。唇がふっと前に出る。
遥も彼女のそれへと、自分の唇を近づけて、触れる。
触れるのに、時間がなかったはずのシャッターが降りるのが長い気がする。
「・・・ん・・・・・・」
優姫が声にならない声を、喉を震わせて出すと、その後の一瞬でシャッターが切られた。
気恥ずかしくて、お互いに苦笑するしかない。それでも撮影してしまったものを確認する。
二人ともが目を瞑って、しっかりと唇が重なっている。唇を重ねられるようにと考慮して顎を摘まんで上を向かせたわけだが、写り的には、無理矢理口付けているようにも見える。
「・・・これは・・・・・」
さすがの優姫もそう感じたのか、恥ずかしそうにしている。けれどこういうのは嫌いじゃない、というような顔で、無理矢理感がどこか好みであるような表情だ。
後は互いに正対して抱き合った風なポーズや、いつものように優姫の頬から手を伸ばして、耳元の髪に手を入れてよしよしと撫でるようなポーズやら、単純という単純なポーズではなくて、遊びながら撮った。
一しきり楽しんだ後は、帰宅しながら談笑する。
自宅に最寄の公園によって、ベンチに腰掛ける。
レンガが敷き詰められていて、ところどころに植木が成長して背の高くなった気が数本と、砂場にブランコ、シーソーに滑り台、その他諸々、遊具がたくさんあり、日暮れが遅くなったせいか保育園児から小学生の1、2年生くらいの子供たちがきゃっきゃと騒いでいる。
ここは、2年前の優姫の誕生日に訪れた公園だ。告白の言葉も、何もかもを覚えている。
「懐かしいねぇ、ここ」
「うん、そうだね。前は小さい子たち、いなかったのにね」
制服も、髪型も、顔付きも、あの頃からは幾分か大人びた。リボンとともに、ストレートなショートヘアが髪に揺れる。さらさらとして1本1本が実に細かく細い。
「ここ、本当に良い公園だよね。レンガ造りなのもどこか雰囲気があるし、植木だってちゃんと手入れされているし。子供たちには一番人気のある公園だろうね」
優姫の右手を取って、体温を感じ取る。ほっそりとしていて、顔も手もそうだけれど、全身の肌が色素が抜けたのかのように白く透明感がある。
その手を握りながら、しばらく会話する。
区切りをつけたところで、鞄から、予ねてから用意しておいたプレゼントを取り出す、優姫が目を丸くして見つめていた。
「はい、これ。改めて誕生日おめでとう。こっちは、優姫にピッタリだと思う香水と、ブレスレット。これは似合うかどうか分かんないけど・・・。
左手、貸して?」
「良いのかな?こんな立派そうなの貰っちゃって・・・」
「貰ってくれないと、僕のお金が台無しになっちゃんだけどね。それに優姫のためを思って買ったものだから受け取ってくれないと。ね?」
英語で言う、付加疑問をつけると優姫はそれで呑み込んだのか、そっと左手を遥に差し出してくる。
手首の内側を自分へと向けて、ブレスレットの留め具である部分を開いて、その手首へ緩やかに絡みつかせる。レザー生地が功を奏したのか、意外に彼女に似合っている。
優姫の手を握り、擦りながらブレスレットと手とを眺めていると、優姫もふんわりと笑みを作っていた。
「ありがとう、遥」
そう言って、躊躇うことなく唇を重ねてきて・・・。
「あーーーっ!」
先刻と同じように、潤った唇と、その奥にある熱をさらに帯びたものを確かめ合っている最中、まだまだ幼い子供の張り詰めた叫び声が木霊した。
2人とも目を閉じていたのに、咄嗟に目を大きく見開いて、はっと唇を離す。迂闊だった。観察者=子供はいつでも遥たちを見張っているような状況でもあったわけだ。
「あ・・・」
目元、頬周りから順に一気に顔を朱に染め上げて、ブレスレットを取り付けた左手の指で唇をそっと押さえている。こんな子供にまで動揺するのか。・・・いや、それは自分も同じか
「見てぇ!さっきこのお兄ちゃんとお姉ちゃんチューしたぁ!!」
「うっそぉー!?ほんとー!?わぁ!ラブラブゥ〜♪」
「あ、いや、その・・・」
遥もちょっと気まずくなって、何か言い返そうとは思ったのだけれど、子供たちの勢いに任された。
「カップルじゃん!カップル!うわぁーチュー見ちゃったぁー!」
3.4人の子供は、2人のキスを見られたことがそんなに嬉しかったのか、さも飛び跳ねるようにして笑い合っている。
「うはー!ほんとに見ちゃったよぅ!ねっ!お兄ちゃん、お姉ちゃんのこと好きなのー?」
子供たちが興味津々とした目で訊ねてくるのに対して、遥は「うん」という返事と共に何度も何度も頷くと、何故か子供たちは大喜びして遥たちを祝福しあった後、ブランコなり滑り台なりと駆けて行った。
「・・・はー・・・ビックリしたぁ・・・」
まだ朱を余韻に引き伸ばしながら、優姫がほっと胸を撫で下ろしながら溜め息を吐いてへたり込んでいる。若干、キスを途中で遮られたのが残念だという顔をしている。
しかしもう1度やり直すわけにも行かず、区切れ悪そうに互いに苦笑を浮かべながらもしっかりと手を繋ぎ、自宅へ向かう。もう数分歩けば辿り着ける距離だ。
その数分の距離で、何を話題にするでもなく、この何気ない静けさを互いに味わっていた。
もうだいぶ暮れ方に近付いてきている。太陽はもう隠れそうなところまで来ているのだけど、しっかりとその光を与えてくれている。
「・・・着いたね・・・・・・」
「・・・うん・・・・・・」
さっきまでの陽気なお互いが、急に大人しくなる。その太陽の光も、どことなく切なさを演出するように感じないでもない。
「ねぇ、遥・・・」
「うん、一緒に居たいんだけど・・・いつも優姫 もっと早く着くんでしょ?これ以上一緒にいるとお母さんたちに迷惑かけちゃうだろうから・・・」
言葉は素っ気ないのかも知れないけれど、優姫とその家族を気遣う気持ちは本に強い。交際をちゃんと認めてくれている相手だからこそ、こちらもしっかりと対応したい。
「あ、うん・・・。あの・・・今日はごめんね?」
「どうして謝るのさ、僕の方こそ楽しませてあげられてなくてごめんだよ」
何を申し訳無さそうにしているのか、優姫が呟くのに対して、こちらこそと述べる。
「うぅん、そんなことない。楽しかった。・・・ありがとう、だね」
「そう言って貰えると嬉しいね」
頭を撫でながら、こっちから口付けしてやる。少し唇が触れ合って、そっと吐息を感じながら離れていく。
「っ、もう、今日何回するのっ・・・」
そんな優姫もキスの最中は、手を遥の肩に回していたのだ。嫌だという要素はどこにもない。むしろその顔は喜んでいた。
彼女の両肩をぱっぱと軽く叩き、言い聞かせるように優しく話す。
「今日もう顔は見られないけれど、電話しよう?落ち着いた時にでもメールしてくれるたらかけるからさ」
「え?あ、うん、分かった」
内容が予想外だったのか、また顔に笑みが咲く。するとどこか物寂し気な雰囲気は消え去って、お互いにすんなりと帰宅する考えになれた。
「んじゃあ、また後で・・・ね?」
「うん。遥、ありがとう。またねっ」
最後にプリクラ撮影時とはまた別の最高の笑顔を向けてくれて、語尾も跳ねさせて手を振ってくれた。
そんな優姫に自分も笑みを返して、ほぼ同時に玄関のドアを引いた―――。あとがき。
なんで大事なところがしょぼくて、どうでも良いところがどこか充実してるのかな?
お久しぶりです、気がつけば優姫ちゃんの誕生日なんかあっという間に過ぎちゃってこの有り様です。6月です。
もうすぐ自分の誕生日でもあるということで、そろそろプレゼントが気になりだす頃だったりします。とりまウォークマンが欲しい。軽く1000曲は入れられる気がします。いや、これほんとの話。
プリクラなんて雹梨自身、ほんっとに撮らないんでそこら辺の描写は正直ほっといてください(笑)最近は「はい、じゃあ○○な顔してー」とか喋ってくれる機械があるそうですねー。なんかそれはそれで興味がww
ただし変顔だけは嫌だねwwwwww
そんなわけで、誕生日篇、果てし無く長いですね(笑)
ちゅっちゅちゅっちゅしてます、子供にラブラブブラブラ言われちゃってます。
現実の自分はというとこんなことがあるわけでもなくて、普通の人にもこんなことがあるわけなくてですね・・・。
もろ現実逃避の結果がここに現れているわけです。
話は変わるけれど、超久しぶりにファンタジー系の奴もしたいなーって思ってるんだよね。世界観とかはレギオスを真似させてもらうか、それとも爽やかにモンハンの世界観を利用するか、それとも全てオリジナルで設定するか。
どちらかというと、モンハンの世界観を利用して俺が執筆するなら、モンハンを知らない人でも話が理解できるようにって意識して筆を執れるからそれもいいかなーなんて。むしろオリジナルの方が理解に苦しむかなーとか。
レギオスの世界観はというと、まぁ純粋にキャラとかはオリジナルですけど、世界観を似せるわけですから、「レギオス」という小説に興味を持ってもらいたいなーという意味合いもあります。
それをいうならモンハンもそうなんだけど、モンハンは書き手も楽しめるんですよね。あ、レギオスも同様です。
ファンタジー系が本当に好きな性分だからしょうがないよね・・・ww
んまぁ、そんなことが頭に浮かんでます、中途半端にしていくつもりはないから頑張れそうな気がするんですけどね。でもまぁ今はAS頑張りますよーw
長らくお付き合いいただきありがとうございましたw
次回の9話もお楽しみにww
ノシノシ
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どうもーお久しぶりです。
さてね、今回も長いのか短いのか分からない気分でだらだらと書いていってしまったので、残念ながら出来栄えはぼろぼろです・・・。
それでもよければ是非続きでどうぞー
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月が5月に近付いてくると、また懐かしい感覚が甦ってくる。
優姫の誕生日だ。
いや、双子だから亜弥音もそうなのだけれど、実質自分には関係のない部分なので、亜弥音のことはそんなに考えていなかった。
だからその分、優姫への贈り物についての考えが頭を過ぎる。授業に集中できないのはそのせいだ。
「・・・3席―綾祈。どうした?眠いか?」
国語の授業中、やはり優姫のことを考えていたのか、担当教師から摘発された。
身の丈が高く、顔も厳ついために彼を恐れる生徒はそう多くない。だが見た目とは裏腹に生徒想いな面があるというのを先輩たちから聞いているため、遥は別段恐怖心などはなかった。
「あっ、いえ・・・。すみません、ぼうっとしてました」
「珍しいな、お前が呆けるなんて。何か悩みでもあるか?」
「い、いえ全然大丈夫です」
慌てて取り成すと、そのまま流してくれたので、先生の背を見つめながらそっと息を吐いた。もちろんそのまま授業に取り組めるはずがなく、また思案する。
彼女の誕生日・・・5月24日は、付き合い始めた日でもある。一昨年は遥が少しの期間、離れた場所へと引っ越すということが決まっていたため、少しでも高価なものを渡したいと思って、譲ってもらったオルゴールを渡したところで彼女から告白が来たのだ。
それがあまりにも嬉しくて、別の学校へ移った時の夏休みでは彼女のための曲を作った。
去年のプレゼントは指輪だったか。一昨年と違って決して高価なものではなかったけれど、その分長い時間優姫と長い時間一緒に居られたのが嬉しかった。
では、今年は何を贈ろうか。出来るだけ存在感があって、大事にされるものが良いのだけど・・・身につけられるものは指輪、ネックレス程度だろう。ピアスは優姫自身付けたくはないと言っていたから除外だし、ネックレスはネックレスで、昔2匹の蝶を象った二色の石が取り付けられているものを贈ったから、それも除外。
となれば何が嬉しいだろうか。
靴などでも良いとは思うのだけれど、この間買ってもらったと言っていたから意味もないだろうし・・・。
そんな思案をしていると、好きな授業も集中できずに昼休みを迎えてしまった。
昼食は、未だに女子に遥の机を使われているため、友人の机を借りて悠矢と陽が机を引っ付けているところへそれを持って行く。
3人とも運動部に食事していないとはいえ、軽音部はそれなりに体力を使う。育ち盛りでもある自分たちの食事の所要時間はほんに少ない。
それでも、箸を進めながら会話をする。
「ねぇ、悠矢ってさ、亜弥音へのプレゼントって考えてる?」
「おー、もうそんな時期だもんなー。素直に何欲しい?って訊くのもアリだけどバレるからなぁ。服でも買ってやろうかなー」
頬杖を突きながらもぐもぐと口を動かしている悠矢は、大雑把にでも渡すものは決めているようだ。
やっぱり悠矢はさっぱりと決めるなーなんて思いながら、遥がまだ優姫に何を贈ろうか思案していることに気付いたのか、悠矢が逆に訊いてくる。
「・・・で、お前さんは決まってないと?」
「う、うん・・・何が良いかなーって。もう贈れるものも全然ないんだよね・・・。思いついたものは全部、新しく買ってもらったって優姫が言ってたのを思い出しちゃうから駄目だし・・・。
陽もなんかヒント出してくれない?」
もう本当に自分の頭では思い当たるものがない。何か探せばあるのだろうけれど、思いつかない。
まだ優姫の誕生日までは2週間弱ある。焦る必要はないのだけど、バイトなどの手伝いを考えるとそうそう買いに行ける時間なんてない。早めに手を打たないことにはプレゼントが遅くなってしまう。
「俺にヒントを求められてもな・・・。そうだなぁ、そういうのは男子じゃなくて女子に訊いてみろよ」
「だっ、駄目だよそれは。付き合ってるってバレちゃうじゃん」
「んなこと言われてもなぁ・・・。じゃあ女子の様子でも見てなんか考えろよ」
人間観察とは良く行われる行為だけれど、それも異性を見るとはなかなか抵抗のある行為だろう。
変な人と思われるのもご免だし、そもそも会話ができないことには何も見つけられるものではないのか。
・・・いやしかし、ほんのりとどこか、頭を過ぎるものがあった。
それがあるだけで、自分を示せられるというか、そういった類のもの。
思いついた。意外にあっさりと。あれだけ思案していた自分が少し恥ずかしい。
「お?」
「ん?なんか思いついたか?」
「あ、いや、でもなぁ・・・」
その贈り物では、前々回、前回よりもさらに質が落ちる気がする。でも彼女自身、無理なく喜んでくれそうな・・・。
あー、どうしよう・・・と、再び自分の優柔不断さが全面に顕れてきた。
「どっちなんだよ、結局」
悠矢と陽2人に急かされて、あーうーと唸る。
「あー・・・今ね、香水でも良いかなーって思ったんだけど、去年と比べると遥かに劣るなーって気がして」
「あぁ、香水な。でも桜衣 香水とか全然身に付けてないんだろ?それならあげても良いんじゃないか?質とかそういうのよりも気持ちだろやっぱ」
陽はいつもこういう面で頼りになる。陽に言われると迷っていることも自ずと一つの道に繋がってくれる。
「気持ち・・・かぁ。そうだよねぇ。んじゃあそれにしよっかなぁ・・・」
どことなく迷いながらも、方針はそれに定まった。後は放課後の空いた時間に街へ繰り出すだけだが、征宗にも相談してみようと頭の中で考えていた。
*+*――――――――――――*+* *+*――――――――――――*+*
「――はい、じゃあ今日はここまでにしよう。各自持ち物は忘れて行かないように。あと、もう暗くなってきてるから早く帰宅するようにね」
女性部長から締め括られて、遥たち部員も素直に後片付けを始める。アンプなどのコードを回収すべく巻き取る時、アンプなどのコードが硬質の床を打つ音がどこか心地良く耳に届く。いかにも活動を終了したという証明らしい。
ギターなどはこの部活のものを借りているため、わざわざ家から持って来て、そして持ち帰るという手間は必要ない。性能もそこそこ良いため、自分のギターを使用する必要性をあまり感じないのだ。
購買で購入したお茶で喉を潤し、額に浮かぶ汗をタオルで拭き取ってから、携帯電話を開く。メールが一件、征宗からだ。
昼休みに、優姫へのプレゼントの話をしたら椿と征宗、そして自分とで、もうそのまま街へ繰り出して商品を直接見て選ぼうという結論に至ったのだった。
一般教養科は、音楽科と比べて授業の終了が遅い。そのため、彼らが授業を終えてしばらくしたところで遥たちの部活も終了するのだ。
それでも1時間弱の時間を空けてしまうため、早く征宗たちの元へと駆けねばならない。
忘れ物がないか確かめて、悠矢たちに一緒に帰れないことを告げて、自転車小屋へと走る。こんなに暗くなるまで待たせて大丈夫だったろうか。
自転車小屋にまで辿り着くと、仲良くしているであろう征宗と椿の声が聞こえてきた。
「ごめん、2人とも!だいぶ待ったでしょ?」
「おーおー、意外に早いもんだなー。もっと遅くまで待つもんかと思ってたけど。まだ真っ暗じゃねぇんだし大丈夫だろ」
「そうそう。優姫ちゃんへのプレゼント買ってあげるんでしょ?じっくり探しに行かないとね」
征宗は別段時間の遅さを気にした様子もなく、椿は早く買い物に行きたいんだと言わんばかりに元気だ。
さっと自転車に跨り、駐輪所を出て商店街の方へ向かう。その間にも、プレゼントの話題が絶えず続けられた。
煌びやかな灯りに包まれる店内に入って、何か良さ気なものを探す。まずは香水。
試しに使用しても良いというように、蓋があけられている香水を椿が自分の手首に振り、匂いを嗅ぐ。
「うーん、あぁいう大人しい子にはこれは似合わないかなぁ・・・。好みでもないだろうし・・・。ちょっときついかなぁ。
・・・・・・これは・・・まぁ一般的に人気だよねぇ。どう?この香」
椿に手首を示されて、手で扇いで匂いを確かめる。確かに色んな女性が纏う香がした。
「うん、良い香。でもつけてる人が滅多に居なくて良い香なのってないかなぁ?」
「おっけぇ、その気持ち良く分かる。自分の彼女がみんなと同じのつけてちゃ嬉しくないもんね。特別扱いじゃなくっちゃ」
ノリノリな椿はどんどんどんどん香を確かめていく。あっ、と何か閃いたような顔をしたと思えばすぐに眉根に皺を寄せ、首を傾げては次の香水を確かめていく。
「香水はあいつに任せとけば大丈夫だろ。なんか他にないか見てきたらどうだ?」
「ん、んじゃあ見てくる」
財布をぱんぱんと手で叩きながら、店内をうろつく。プレゼント選びで悩むのはある意味で楽しい。何が彼女にとって喜んでもらえるのかというのを考えるのが難しいけれど、その分渡した時にちゃんと喜んでくれることを想像すると、楽しみで仕方なくなる。
そこで、ブレスレットが目に留まった。
学校内でも身に付けられるし、派手過ぎず地味でもない。ごつごつした感じもないし、優姫なら小物のようなものでもしっかりと身に付けてくれそうだし。
決めた。これと、椿が選んでくれたものと相談して買おう。
そのブレスレットを手に取り、少し店内をぶらついてから椿と征宗のいる場所へ戻る。
「おっ、遥くんお金持ちぃ〜。それも買ってあげるんだ?うんうん、良いセンスしてると思う。
私が選んだのこれなんだけどどうかな?また確かめてみて」
促されて、優姫と同様に白い手首を借りて手で扇ぐ。
フルーツ味・・・桃のような匂いがあって、甘い。香も今までにそんなに気が付かない匂いだったため、身に付けている人が居ない証だ。
「うん、これは良いかも。これで優姫も喜んでくれるかな?」
「でしょ?私も頭ん中優姫ちゃんでいっぱいにして考えてたの。これは似合うと思うんだけどねぇ。まぁくんも良いと思うって言ってくれてるし。これにしちゃいなよ」
椿の後押しに遥も意を決し、ブレスレットとこの香水にすることにした。
多少の出費は大丈夫。先月だってきちんと桜衣家の手伝いからの給料ももらったし、お金には余裕がそれなりにある。
「よし、じゃあそうするよ。
えっと・・・どの香水?」
「あぁーこれこれ。値段もお手頃だしね」
「うん、分かったこれね。
ありがとう2人とも。じゃあ買ってくる」
店のカウンターに向かい、プレゼント用に包装してくださいと頼むと店員から彼女へのプレゼントなのだろうとからかわれた。
それを恥ずかし気に受け止めつつ、お金を払ってしっかりと受け取り、丁寧に鞄の中に納める。これで安泰だ。
外で待っている2人の下で改めて礼を述べ、別れ道まで一緒に自転車で向かって、そこで解散した。
椿に囃されたから・・・とかそんなのでなく、素直に優姫に喜んでもらえると思った。
当日は一緒に彼女と帰宅しよう。そこで周囲にバレてしまっても構わないではないか。そんな意気込みで遥は自転車のペダルを強く踏み込んだ。あとがき。
長いせいで面倒くさい!
本当はGW頃から書いてたのにこの有り様だよ!
16日だろ、今日。あと8日で誕生日じゃねぇかwww
どうすんだよ俺www
急ぐしかない。
いやー今回はね、もう何日にもわけて書いてたから話がうまく行きません。
最近俺も集中力が欠けてきたぜ・・・!
でも好きな事だから手を抜かずにはいられません。頑張ります、精進精進。
本当はもっと解説すべきことがあるんだろうけれど(香水の種類とかブレスレットの詳細とか)、疲れてるんで省きます、さーせん。
ではでは次回は雹梨の時間軸に近づいて、優姫ちゃんの誕生日編です、お楽しみにーノシノシ
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ちゃおっすww
今回はまさかの出来事が起こります。まさかの出来事。
いや、そうでもないかな・・・w
色々話を読み返してみたけれど、「優姫の○○なところが可愛い」って表現どんだけしてんだ俺はwwって気がついたね(笑)
まぁまぁそれだけ優姫ちゃんのイメージが離れないからっちゅーことですw
ではでは続きでどうぞw
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高校生活が始まってから、2週間目の週末。
遥は午前中に部活を済ませて、午後からは優姫と店の手伝いに勤しんでいた。
桜衣さんが貸してくれた店用の制服の上にエプロンを着て、店内に繰り出す。早速優姫の忙しそうな姿が目についた。
客数はほぼ満席。気軽に訪れることが出来て、手軽にパン類を食べることができて、友人同士の語らいの場として非常に好評を得ているこの店は、謳榮に通う生徒ならばここ近隣の地域に住んでいる生徒が多くここへ足を運んで来る。
そのため、休日などは午前 午後関係なしに高校生達の利用が多い。
「あっ、遥 来てくれたんだ。部活忙しかったんじゃない?」
ざっと周囲を見渡して、さぁという時に優姫が嬉しそうにしながら話しかけてきてくれた。
ウェイトレスの姿に相応しい、可愛らしい出で立ちで、服装が極端に似合い過ぎていた。
「こんにちは。部活?あぁ全然大丈夫だよ。こっちは忙しい・・・・のかな?」
「うぅん、つい今お客さんみんなのところに注文を届けたからまだしばらくは大丈夫。
それよりも色んな人に話しかけられるからちょっと苦しくて・・・」
遥の前ではそれなりに明るい表情と態度な優姫なのだが、「人見知り」という点では非常に強い段階にあるらしく、初対面の人と話す時はもうそれだけで緊張してしまうのだという。
そういう大人しい面に惹かれるという仲間の声も良く聞くから、この店内で彼女に話しかける男子たちはそれが目当てなのかと思うほどに遥も用心深くなってしまう。
ちなみにここでのバイトは2回目であるから、1回目の優姫の大人気っぷりはもう感嘆の息を吐くしかない状況だった。
今回はどうかは分からないが、先週のバイトでは仲良く優姫と喋る時間がそれなりにあったのだけど、今日の客は、遥と優姫はこういう関係なんだということを理解しているのだろうか?
「そりゃあ優姫の人気は凄いもんねぇ・・・。うちのクラスにも「桜衣と話せたー」とかっていう声も良く聞くから僕は僕で凄く心配で・・・。その友達が優姫に告白しようだなんて言い出したらどうしようって・・・」
「そっ、そんなことないと思うけど・・・。
でもうちのクラスの女の子も遥と喋ったっていうし・・・。その・・・遥がその子たちを好きになっちゃいそうな気がして・・・」
一瞬、彼女からほんのりとした嫉妬の色が窺えた。恋人同士というのを知らない者がほぼ全員という状況で、互いに好意を寄せる男女がいるのだから、優姫も心配なのだろうか。
「・・・もしかして、妬いてる?あ、いや、僕も妬いたけど・・・」
「っだ、だって・・・私、あぁいう子と違って大人しいし控え目だから・・・一緒に喋ってても楽しくないのかなって思ったから・・・」
素直だ。性格上嘘や誤魔化しを言えないというのは理解していたから本心が返ってくると思っていたけれど・・・。
「楽しくないわけないよ?楽しくなかったら振るってわけじゃないけど、こんなにもずっと一緒にいるわけないし。優姫もそういうことを思ってくれてたってことは僕のこと好きでいてくれてるんだよね?」
「こっ、こんなところで言わないでよ、恥ずかしい・・・。好きな人が別の女の子と話してたら妬くのは当たり前だよ・・・」
遥の言葉を嬉しそうに、恥ずかしそうに受け取って、やや満足気な笑みを添えてそう呟く。優姫と一緒にいて、こういう瞬間がまた可愛いと思ってしまう。
だから遥自身、優姫とは離れられないでいる。もちろん離れたいわけではない。それだけ自分も優姫のことが好きなのだ。
「でもこういう雰囲気の方が言いやすいと思うんだけど・・・。2人きりの環境より」
「た、確かにそうだけど・・・。と、とにかく、他の女の子と喋るのは気を付けて・・・ね?」
少し頬を朱に染めて、優姫は踵を返してそそくさと別の場所へ移ってしまった。恥ずかしがってるのか、と内心で微笑みながら次の客が訪れるのを待った。
昼にこの店の手伝いをしにきて、3時間と少し。昼から、その下がりくらいまでの時間帯がこの店がもっとも忙しくなる時間なのだ。
文化系の部活は、休日ほとんど午前中で終わるため、友人と遊ぶことと昼食を兼ねてここを利用する。運動部は、午前中で終了するのは軽スポーツ系なので、同じくそういう生徒がここを訪れる。
昼からも活動するという部は正直な話ここを訪れることはまずない。
4時過ぎに至ると、多くのものは皆食事を済ませて出て行ったのだが、今遥たちが相手にしている客は4時前から話し始めて、初対面なのだけれど、上手く馴染んでいた。
「――へぇ、優姫ちゃんは茶道部なんだ?でもあれだよね、ここパンとかケーキとかなのに真逆のお茶なんだね。あーでも似合いそう。どう思う?」
「あ?俺?いや、俺に振られても・・・。まぁでも大人しい子に茶道とか華道って似合いそうだよな。そいうのって人気出るんじゃないか?」
亜弥音と悠矢の互いの関係をもう少し優しくしたような雰囲気のカップルだった。亜弥音がもうちょっと甘えるようになって、悠矢がそれとなく優しくなった感じ。決して悪いカップルではなかった。
「そ、そんなことないです・・・。目立つような性格でもないから余計に・・・。
そちらは何かしてるんですか?」
「うぅん。私らはなーんにも。中学でテニス一緒にやってたから高校でもそうしようかなって思ったけどやっぱり忙しいのは嫌だからってことで帰宅部だね」
小さくなったパンを手で千切って口の中に運ぶ彼女が、帰宅後の時間の余裕が嬉しいのだというように話す様を優姫と一緒に和やかに見る。そういえば優姫もパンを食べる時は齧り付かないで一つ一つ手で千切って食べていたなとか、そういう既視感に捉われる。
「帰宅部っつってもお前いっつも俺を連れ回して色んなところほっつき歩いてんじゃねぇかよ・・・。
でも茶道部だって割りと大人しい部活だから毎日の活動じゃないんだよな?」
「あ、はい、週に2日です・・・。あとは活動っていう活動はないから・・・」
もう一言言おうとしたけれどそれを止めたのか、弱々しく口が閉ざされていった。その後の言葉が気になったが、敢えて言及せずに遥もそのままにしておいた。
「――んよし、美味しかったー。ありがとうね、なんかいいとこに来ちゃったね。あ、そだ、メアド教えてよ。同じ学校なんだし、休み時間とかも話せたらいいなって思うから。・・・駄目?」
「へっ?あ、全然大丈夫。送れば・・・いいかな?」
「ん、じゃあ受信するよ」
パンを食べ終えて紅茶を飲み干すと、この話題に。すっと携帯電話を互いに取り出し、アドレスの交換をする。
すると同じように向こうの彼氏も同じ話題を振ってくるわけだ。
「お、じゃあ俺もお前の教えてもらおうかな。俺が送るわ」
「あ、うん分かった」
遥も携帯を開いて、赤外線受信の項目を選択する。そういえば以前に機械類に詳しい友人がIC送信がどうのこうのという話をしていたが、気にせずに向こうからの情報を受信する。
自分の中学校でも、珍しい名を持つ生徒は見なかったが、この人は割りと珍しい名前をしていた。
「んー・・・難しい名前だねぇ・・・さくや・・・え、なに・・・えっと・・・」
「征宗」
名前を言われて、あぁ確かにそう読めると納得した。
「ん。征宗くんね、分かった。じゃあ僕も送るよ」
携帯電話の画面に、やや小さめな文字で「朔夜 征宗」と表示されて、しばらく眺めてから自分の情報を引っ張り出す。
「おう。高校入るとこうやってダチが出来るから楽しいんだよな。休み時間とか声かけられるし」
「うん、そうだね。僕も結構友達が増えたよ」
赤外線の送信をしながら、こんな会話をする。中学校という狭い空間から、その中学校を出た生徒が高校に来るわけだから、さらに空間は広くなる。
「んよし、受信出来た。ん?お前もなかなか見ない名前だな。遥ね、またなんかあったら連絡してくれよ」
「うん、頼りにするよ」
互いに笑みを交わして、携帯を仕舞う。同じく優姫たちもアドレスの交換が済んだようで、自分たちと同じような会話をしていた。
食器を揃えて運びやすいように整理してくれて、征宗は立ち上がる。
「よし、じゃあ会計済ませてくる。値段もちょうど良いからまたちょくちょく遊びに来るかも」
「あ、ありがとうございます」
優姫がぺこりと頭を下げて、頷いた後にレジの方へと彼は歩んでいく。その後姿を、3人揃って何かを喋るでもなく見守る。
レジ役の店員からありがとうございましたという声とレシートを受け取りながら、征宗はこちらを振り向く。どこか満ち足りた表情だった。
「おい、椿ー、行くぞー」
手提げ鞄を肩で担ぐようにして持ち、恋人――椿の名を呼ぶ。
「あ、うん。今行くから。
じゃあこれで。ありがとね、美味しかったよ。カップルでバイトって面白いね」
「バレてた?」
目立つ八重歯を存分に笑みと混ぜ合わせて、にっと笑う椿の発言に、気恥ずかし気に訊くと、バレバレだと言われた。
征宗が悠矢をもう少し柔和しく、優しくなったというようにしたとすれば、椿の方も、亜弥音が大人びて理知的になった感じのカップルだった。どちらにせよ、悠矢と亜弥音の2人の雰囲気が似合っていた。
「当ったり前だよー。でもこういうお互い柔らかい感じのカップルも良いよねぇ。2人とも仲良くね。んじゃ、またね。バイバイ」
こちらに手を振りながら、征宗へと駆ける椿に遥たちは業務上の礼を述べて店を出て行くのを見送った。
これでまた一段と店内が静かになった。客はもういない。閉店まではまだしばらくの時間があるけれど、新たな客が来るまでは遥と優姫の空間になっていた。
「お疲れ様。でもまだこの後片付けだね。・・・それにしても楽しい人たちだったね」
「うん、まだこれだけ頑張らないと。
良い人たちだったけど私たちだって。・・・少なくとも私は遥くんが良い人だと思うよ?」
カチャカチャとトレイに食器を乗せながら、はにかんだ様子でそう言う優姫に、遥もくしゃっと笑みをぶつけた。
「へへ、言うねぇ、優姫も。まぁでもありがとう。僕も・・・そう思うよ。
あ、食器は僕が持っていくから優姫は休んでてよ。ずっと立ちっ放しで疲れたでしょ」
トレイを支える優姫を遮って、やや無理矢理にでも優姫が持つトレイを遥が持つ。その過程で あ、という間の抜けた優姫の嘆息が聞こえた。
「あ・・・ありがとう」
うんと返事をして、自分の両手にそれを置いてもらう。静かな動作がいかにも彼女らしい。
そのまま厨房の方へと運んでいく。
「あ、ありがとうね、遥くん。もうお客さんいないよね?先週で分かったと思うけど本当にこの時間はお客さんが来ないから、優姫と2人で休んでてくれる?もう少ししたら飲み物とか持って行くから」
「あー、すみません、ありがとうございます。じゃあ・・・」
「ん」
店内に居るように促されて、とりあえず一礼をして厨房を出る。奥まった場所は壁とソファ式の座席が引っ付いているため、そこに優姫がちょこんと可愛らしく座りながらも、布巾を持ってテーブルを拭いていた。休んでいろと言ったのに、この始末だ。なかなかの仕事人である。
「とりあえずはこれで大丈夫だね。桜衣さんがもう少ししたら差し入れ出してくれるって言ってたから2人で休んでてだって」
「あ、うん。分かった。
あっ、こっちにどうぞ」
「うん、ありがとう」
用件を告げると優姫は、自分が座っていたところから隣で少し移動し、そこへ遥が座るように退けてくれた。それをありがたく感じながら、彼女の隣に座る。
すると、いつものように柔らかくすっと遥にもたれてゆったりと深く息を吐く。本人の意思に関係なく甘え上手なのだ。
「・・・久しぶり・・・。こういうの・・・」
落ち着いているのか安心しているのか、こういう時の優姫の言動はとても静かになる。遥以外の人にはこういう静かなところが全面に出るため、周囲からは好感を得ているのだ。もちろん遥自身、こんな優姫の自分に見せてくれる甘えがりな部分も好きだった。
「・・・そだね。先週はお客さんの出入りが静かになっても喋る機会なんてなかったもんね」
「うん・・・」
静かな優姫と話す時は、それと比例して自分の気持ちも落ち着けることが出来る。緩急の差がはっきりとあるからか、彼女といるとメリハリが付けられる。
いつもなら髪をそっと撫でてさらに落ち着かせてやるのだけど、桜衣さんや従業員の目が気になってそんなことは恥ずかしくて出来なかった。
「お姉ちゃんがいた時もそうだったけど、遥といるのが一番安心する。ほっとするっていうか・・・」
「そう?僕としては落ち着かせてあげられているのか心配だけど・・・」
「うぅん、全然。なんだろう・・・安心とかっていうより・・・嬉しい?」
「あっ、それは僕にも分かる気がする」
そんな話をしていると、桜衣さんの姿見えたので、名残惜しみつつも、優しい香りを含む優姫の身体を離す。
「はーい、優姫ちゃん発明のキャラメルミルクティー。これ凄く美味しいのよ。飲んであげてね。それと、メロンパンとか色々なパン。味には自信があるし、お茶とも合うと思うよ」
「あ、すみませんありがとうございます」
湯気立つキャラメルミルクティーが注がれたカップ2人分をコツっと良い音を立てながら置き、甘い匂いが鼻につく。そして各手作りのパン。どれも美味しそうなものだ。
「あぁそんなのは遠慮しなくていいのいいの。うちも結構作り過ぎちゃって余るから食べてもらえると嬉しいな。んじゃあまたお客さんが来たらよろしくね」
2人に差し入れだけを渡すと、そう最後に残してまた厨房の方へと向かってしまった。自分たちはこの時間に休むことはできるけれど、あとの従業員たちはそれなりの休息時間があるのだろうか?
そんなことを考えながらも、鼻が甘い匂いをしっかりと拾う。香りだけでも安らぐ気分だ。
「えっとこのミルクティー・・・優姫が考えたんだってね?」
「あ、うん。私の好みに合わせて作ったから遥・・・には合わないかも。飲んでみて?」
「うん、いただきます」
カップの取っ手に指を掛けて、静かに持ち上げて口元へ運ぶ。
キャラメルミルクティーなんて、名前だけで豪華そうなものをそうそう飲んだことがないため、非常に興味深いものだったし、優姫が考えて作ったというものなら尚更飲まずにはいられなかった。
息を吸うように、熱いそれを少量口に運ぶ。その時に甘い香りが味となって口内に広がった。
視線を感じたため、優姫を目の端で捉えると、気になる顔をしていた。
「ど・・・どう・・・?」
「ん、美味しい!これ普通にお店で出てても全然おかしくない味だよ。へぇー、ミルクティーも好きだけどこれが一番美味しいかも!」
事実、美味しい味がした。辛いものか甘いものかと言われれば断然甘党だった遥にとって、この味は余りにも極上すぎた。
「ほ、本当・・・?私が作ったから、とか無理してない?」
「全然!お世辞なんて言わないよ僕は。温かいから余計美味しいね。甘さとかもちゃんと量って作ったの?」
「う、うん。ちゃんとキャラメルの香料とか用意して手間かけて発明っていうか・・・作ったんだけど・・・」
心配そうな顔をしておきながらも、どこか言葉が揚々としている。遥の言っていることが本当のことだと感じたのだろう。苦労の甲斐があったという顔である。
「へぇー優姫はほんと凄いねぇ。なんか細かいところまでしっかりしてるって感じだし。優姫の性格とかが改めて分かった気がしたよ。美味しい」
「それは言い過ぎだよ。でも美味しいって思ってくれたなら良かった」
満面な笑みを咲かせながら、パンを手に取って遥に渡してくれる。一緒に顔を見合わせて笑みを作り、口へ運ぶ。
ほんの少しの休憩時間だが、本当に休めた気がした。優姫なんて朝から手伝いをしているため、彼女の疲れとくらべると何のその、という意気込みで取り組める気がした。あとがき。
おいおいおい、まさかのまさかだよ!
何気に椿ちゃんと征宗くん登場しちゃってるよ!(笑)
本当は登場させないつもりだったのですが・・・w
まぁこのASを続けるにあたって消去した小説でしたが、なんらかの形で登場させるにはやはりこのASでしかないと思って早いうちに登場w
まーくん癒威ちゃんのことが好きだったのに椿ちゃんとデキてます。結果的にはそういう話だったわけです。
さて、今回のお話では優姫ちゃんが男子の客に捕まって、遥くんが女子の客に捕まって・・・で、お互いに嫉妬しちゃうっていうのを想像していたのですが、面倒臭くなったのでほぼ省略www
最近亜弥音とか絵璃華ちゃんとかの存在が薄いよ!
そっち視点で書いてみたいなーw(笑)
キャラメルミルクティーは優姫ちゃんのジャスティス!
いや、単に紅茶を注ぐor作れる喫茶店の女の子っていいよなぁーってのをだいぶ前から思ってて、設定としては琴音ちゃんから紅茶類の作り方を教えてもらってて、それを応用したーみたいな感じで受け取ってもらえると嬉しいかな。
優姫ちゃんがカップに紅茶を注いで遥に「どうぞ///」とかしたかったんだけど、無理だったww
キャラメルミルクティーのホット版は本当に美味いッスww一度飲んでみれば分かるwwミルクティーなんかと比べちゃいけないって感じになるからwほんとww
まだまだ語り足りませんが、
本編が結構な長さなので、この辺にしときますwではではw
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